【研究室について】
 本研究室では,原子を並べて新しい半導体結晶やナノ構造を創り,それらを応用して環境負荷の低減やエネルギー問題の解決につながる新しい金属酸化物半導体材料を開拓し,「グリーンデバイス」への応用を行っています.最近では特に,人工光合成による「グリーン水素」や,太陽電池による「グリーン電力」を生成する半導体技術の開発を進めています.
【研究の概要】
 次世代のワイドギャップ半導体デバイス材料として酸化ガリウム(Ga2O3)のような金属酸化物半導体が期待されており,本研究室では様々な金属酸化物薄膜やナノ構造の液相や気相成長技術の開発を進めています.半導体にバンドギャップより大きなエネルギーの光を照射すると,価電子帯の電子が伝導帯に励起され,価電子帯には正孔ができます.太陽光エネルギーを吸収して生成した正孔・電子で物質を反応させることで化学エネルギーに変換する技術が人工光合成です.実用化への最大の課題はエネルギー変換効率の向上であり,太陽光エネルギーの半分を占める可視光の有効利用が重要で,よりよい光触媒材料や構造の開拓が必要です.そこで本研究室では,銅やガリウムを含む金属酸化物半導体(Cu2O, Ga2O3, CuGaO2など)や金属水酸化物半導体(GaOOH)などの作製技術の開発とデバイス応用を行っております.
【最近の研究テーマ】
●太陽光エネルギー変換用の金属酸化物系半導体の開発
 太陽から地表に届く光エネルギーの半分は可視光の波長領域です.これを有効利用に光吸収できる半導体のバンドギャップ理論値は1.4 eVです.金属酸化物半導体は大きなバンドギャップをもっているものが多いため,光吸収層にはナローバンドギャップ材料が必要です.そこで本研究室では,新しい混晶半導体材料の開拓や,準安定な結晶構造を実現する結晶成長技術,ナノドット化によるバンドギャップエンジニアリング技術の開発を進めております.デラフォサイト構造のα-CuGaO2はp型ワイドバンドギャップ材料として期待されております.これを準安定結晶相のウルツ鉱型のβ-CuGaO2を合成することや,原子比率を変えてCuGa2O4とすることで可視光吸収の効率を増大できています.最近では,2.3eVのCu2Oをナノドット薄膜化することで1.5eV程度までナローバンドギャップ化することに成功しております.
 また,Cu2Oの液相成長では,ゾル状態の液体原料薄膜内でスピノーダル分解による相分離を発生させることで,幅が数十nmで長さが数十μmのワイヤー構造が形成できることを見出しました.これを半導体表面に密に作製することで表面積が増大でき,触媒反応効率の向上が期待できます.さらに,ゾルの縮重合反応や熱処理により,表面微細構造を制御可能になり,その上にCuドットやCuNドットを作製できています.
●「自己組織化」を利用した半導体ナノ構造の作製技術開発
 ウルトラワイドバンドギャップのGaOOHでは,ゾル状態の液体原料薄膜を面内方向にゲル化させる手法を開発し,高配向のGaOOHゲル膜の作製に成功しました.さらに,その表面上では厚さが十nmで,幅が数μmのナノシート状の微結晶板が層状成長することを見出しました.この技術を応用して,GaOOH透明半導体ナノシートの作製を進めております.
※ゲル化反応とナノシート成長過程の動画
●有機金属分子線エピタキシ(MOMBE)によるIII-V族化合物半導体ナノ構造の作製技術開発
 MOMBE技術を用いて,GaAs系化合物半導体を用いた光ファイバー通信用レーザーや,Si集積回路の光配線技術開発,原子層エッチングよる量子ドットの形状制御,単一量子ドット,量子ドット対の作製技術なども開発しております.
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